公衆の敵 映画『Dillinger(デリンジャー)』(1973年)&カーターファミリー音楽 (The Carter Family)

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監督:ジョン・ミリアス(John Milius) 主演:ウォーレン・オーツ(Warren Oates)

伝説の銀行強盗ジョン・デリンジャーを演じるウォーレン・オーツ。
実際のデリンジャーとかなり似ている、似せた部分も有ると思うがそっくり。

ボニー&クライドと同時代(1933〜1934年の大恐慌時代)実在のギャング、ジョン・デリンジャーの生涯を描いた作品。
リアルで暴力的な描写が印象的なクライムアクションで、FBIとの対決を軸に、アメリカン・ニューシネマのラスト的な作品。

後の2009年公開、パブリック・エネミーズ(Public Enemies)でジョン・デリンジャーを演じたのが、ジョニー・デップ(Johnny Depp)

前作のデリンジャーを観ているので、ジョニデのデリンジャー西郷隆盛を横浜流星が演じるぐらいの違和感があった。
映画も前作とは違いスタイリッシュで、バイオレンスよりも人間ドラマ重視。

こちらも音楽が印象的ですが、前作とは違いブルースやスウィングが効果的に使われていて、華やかな印象です。

ジョン・デリンジャーとエピソード

主にアメリカ中西部(シカゴ、インディアナなど)で銀行強盗、脱獄、FBIとの銃撃戦を繰り返し、その大胆な犯行スタイルと逃走劇でメディアに大きく取り上げられていた。1934年7月22日シカゴ近郊のリンカーンパーク(Lincoln Park, Chicago)にある映画館バイオグラフシアターで射殺(31歳没)

・この時、情報をFBIに売っていた同伴のアンナ・セージが、標的の目印になるように「赤いドレス」を着ていた。「赤いドレス」は、しばらく「裏切りと死」「愛と取引の境目」として忌み嫌われた。

・FBIは彼を「公衆の敵ナンバー1:Public Enemies」として追い詰めていた。

・デリンジャーの顔写真がFBIの射撃練習の標的として使われ、デリンジャー追跡でFBIの捜査技術や訓練は強化され、後の捜査方法に大きな影響を与えたと言われています。

▲アメリカのサイトで販売されているトートバック「これはちょっと持ってウロウロはちょっとなぁ!」

映画でのラストシーン;FBIに囲まれて逃げ切れない…と悟ったシーン。
ウォーレン・オーツはわずかな笑みを浮かべながら、一歩だけ前へ出て…。

アメリカン・ニューシネマに共通の“滅びの美学”を演じて終焉。

▲デリンジャー死去の翌日の新聞TOP(1934年7月23日)

♬サウンドトラックをバリー・デ・ヴォーゾン(Barry De Vorzon)が担当。オールド・カントリーやゴスペル的な旋律の1930年代風のサウンドをシーンに併せて、ストリングスを使った叙情的テーマ等にアレンジしています。

映画もその音楽とともに、とても印象に残っています。

特に印象に残ったテーマ曲(Soundtrack)

The Old Gospel Ship(原曲:1935年頃 The Carter Family)

他のカーターファミリーの代表的な曲

オリジナル・カーターファミリーについて

白人だけのバンドの元祖。通称A.P.カーター、1891年-1960年、歌、ハーモニカ)、サラ・ダウアティー・カーター(Sara Carter、オートハープとギターと歌、1898年-1979年)、メイベル・アディントン・カーター(Maybelle Carter、ギターと歌、1909年-1978年)の3人で活動を始めた。メイベルはA.P.カーターの弟エズラ(エック)・カーターの妻。

♬”Will the Circle Be Unbroken“(永遠の絆)Nitty Gritty Dirt Band · Mother Maybelle Carter

・初出:元々1900年初頭からあった讃美歌を1935年頃にカーターファミリーのAPカーターがアレンジ、録音はもっと古い。
・歌詞:亡き家族を天国で再会することを願う、アメリカの伝統的ゴスペル
・スタイル:スローな3拍子、ハーモニーが美しい

この曲は後に多くのカントリー/ブルーグラスアーティストにカバーされ、”circle songs”の代表。日本人も聞けば思い出すメロディ♬

♬” Keep On The Sunny Side” Nitty Gritty Dirt Band · Mother Maybelle Carter

・初出:1899年の讃美歌をカバー(カーターファミリー版は1928年)
・歌詞:明るい信仰と希望をテーマにした陽気な曲
・スタイル:明るいメジャー調で、バウンシーなリズム

カーターファミリーの代表曲の一つで、日本では昨年亡くなられた高石ともやさん率いる♬「ザ・ナターシャセブン」が日本語の歌詞を付け、「陽気に行こう」のタイトルで唄っていた。

♬”Wildwood Flower” The Grand Ole Opry

・原曲:Mother Maybelle Carter(ギターソロで有名)、カバー:Emmylou Harris、Joan Baez
・ギターの「カーター・ピッキング」スタイルの教科書的楽曲として、現在でもアコースティクギター/バンジョー初心者の課題曲として人気

▼ 影響を受けたアーティストたち

Johnny Cash(June Carterが妻)
Emmylou Harris
Bob Dylan
Doc Watson
Gillian Welch
Tyler Childers
Willie Watson(元Old Crow Medicine Show)

現代フォーク~アメリカーナにおいては、知らずに引用しているレベルで影響が浸透しています。